子どもに対して、いつからインターネットに触れさせるのか悩んでいる親御様も多いことでしょう。
とはいえ、GIGAスクール構想も普及し、今では小学生ですらタブレットを使ってGoogle検索をするのが当然ですし、SNSを活用する時代になりつつあります。
本稿では、子どもに関する「ネットリテラシー」について解説していきます。
インターネットは便利である
まず、子どもたちは「インターネットは便利である」ということから学び始めます。
GIGAスクール構想の助けもあり、今では小学校でタブレットを使うのが普通になりました。
その結果、インターネットを使ったことのない小学生はほぼいなくなったのではないでしょうか。
そして、学校で使うタブレットには非常に強いロックがされており、子どもたちは「インターネットの便利なところ」のみを享受できるように授業で活用されます。
もちろん、座学としてインターネットリテラシーについて学んでいますが、実際に子どもたちが被害にあうリスクをとるような実践的な授業を実施することはないでしょう。
そのため、「便利である」という部分だけを覚えたまま成長していく子どもは多いことでしょう。
インターネットは怖いところ?
とはいえ、親の立場からすると「インターネットは怖い」と思う部分もあるのではないでしょうか?
ですが、昨今のIT技術の進歩を考えると、インターネットを使わずに学習を進めることはむ可能と言っても過言ではありません。
とはいえ、「インターネットは怖いところである」ことは事実と言えます。
その事実としっかりと向き合ったうえで、子どもには「正しくインターネットと向き合う」とこを教えてあげる必要があります。
インターネットを使う上でのリスク
なぜインターネットは「怖い」のでしょうか?
実際に存在するインターネットの「怖い部分」すなわち「リスク」を把握することが、正しいインターネットリテラシー教育の第一歩です。
ウィルスやフィッシング詐欺にあうかもしれない
インターネットには、ウィルスやフィッシング詐欺などのリスクがあります。ウィルスはPCを侵害し、個人情報が盗まれてしまう可能性があります。パソコンで住所録を管理している場合は特に注意が必要でしょう。
また、フィッシング詐欺とは、本物に似た偽のウェブサイトに誘導し、そこでパスワードを入力してしまうことで、個人情報やクレジットカード情報が盗まれてしまうことを指します。
「子どもがログインしたサイトにクレジットカード情報は登録されていない」と思うかもしれませんが、同じメールアドレスとパスワードを使用している別のサイトはどうでしょうか?
Amazonや楽天といったECサイトだけでなく、iPhoneであればApple、AndroidであればGoogleのアカウントが乗っ取られる可能性もあるため注意が必要です。
被害者にも加害者にもなる
掲示板やSNSなどで、誹謗中傷の発言をしたり、それが原因で炎上するようなことをみたことはありませんでしょうか?
知らないうちに、自分の情報がネット掲示板に書き込まれていて、そこから誹謗中傷がとまらない、いわゆる「ネットリンチ」と言われる状態です。
インターネットは匿名性の高いように見えますが、少しの情報から個人を特定することは簡単です。
たとえば、以下のような手順により個人名が特定されることもあります。
- インスタグラムに投稿した写真から自宅のおおよその場所を特定する
- フォロワーの情報から学校や会社を特定する
- フォロワーから特定され、交友関係を特定する
このように、SNSは情報のつながりともいわれていますので、自分の情報にだけ注意していても情報が漏洩することがあります。
つまり、自分が被害者にもなりえますし、ある意味では犯罪をほう助する「加害者」側にまわってしまうこともあるのです。
特に、見えない相手に対する「攻撃」も社会問題として取り上げられています。
たとえば、何かスキャンダルを起こした芸能人に対して「最低だ!」や「人間のクズ!」といった暴言を浴びせるようなことがたびたび発生しています。
これらも立派な「犯罪」であり、たった数文字をSNSへ書き込んだだけで立派な加害者になってしまうのです。
お金を使いすぎる可能性も
近年のゲームの多くには「ガチャ」の機能が存在します。
具体的には「一定の確率で強いアイテムやキャラクターが取得できる」というものであり、一度のガチャで3000円程度の出費が伴います。
実は、このガチャはよくできておりユーザーの「射幸心」を煽るための様々な工夫が凝らされています。
親世代の皆様が子どものころにスーパーやおもちゃ屋さんにあったガチャガチャとはレベルが違うのです。
射幸心の一番わかりやすい例が「パチンコ」や「スロット」でしょう。パチンコやスロットは、プレイヤーの射幸心をうまく煽ることでユーザーがより多くのお金を投入するようにできています。
それよりはレベルが低いとはいえ、パチンコにハマっている大人がたくさんいるんですから、子どもがお年玉をすべてガチャにつぎ込むのも分かるのではないでしょうか?
ゲームだってインターネット
インターネットに全く接続しないでプレイできるゲームはほとんどない、というのが現状です。
必ずと言っていいほど「ネット対戦」の機能を有しており、インターネットを通じて友達や知らない人と一緒に冒険したり、直接対決することも。
顔の見えない他人とのコミュニケーションをすることになりますので、SNSとおなじようにトラブルの原因となることもあり得ます。
ニンテンドーやSONYは機種に紐づけたアカウント連携がありますので、フレンド登録を通してやり取りをすることも可能です。
そのため、「スマホは持たせていないから大丈夫!」とも言いきれないことに注意しましょう。
スマホ依存症の可能性
一日中スマートフォンを使い続けることで、他のことが一切手つかずになってしまうような状態を「スマホ依存症」といいます。
YouTubeやTikTokといった動画投稿サイトを見続けるということだけでなく、LINEをはじめとするコミュニケーションツールを使い続けるのも一種のスマホ依存症と言えるでしょう。
スマホ依存症になると、勉強やスポーツに力が入らないだけでなく、視力、集中力、そして体力の低下なども考えられます。
インターネットリテラシーが低いまま大人になるとどうなる?
インターネットは、非常に便利に使うことが可能である反面、これまで説明してきた通りにたくさんのリスクがあります。
とはいえ、インターネットから遮断されたまま大人になると、就職してから非常に不利になります。
就職活動で不利に働く
現在では、就職活動もデジタル化が進んでおり、コロナ禍も相まってリモート面接が普通になりました。
企業としても学生としても、移動する時間が不要になりますのでより多くの面接を受けることが可能となりました。
慣れてくると、1日で3社以上の面接をするような猛者もいるようです。
そんな中で、デジタル機器をうまく使えない学生は面接以前の問題として落とされる時代が来ようとしています。
PCは使えないにしても、スマホやタブレットを活用できないと就職活動を始めることすらできないのです。
会社に多大な損害を与える可能性がある
まず、インターネットを全く使用せずに仕事を進めることが可能な職種はもはや存在しないと言っても過言ではありません。
今後、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むなかで、デジタル機器を使わない仕事はなくなることが予想されます。
建築や医療の分野でもタブレットをフル活用するのが当然になってきており、紙とペンだけで仕事ができる世界ではなくなりました。
パソコンを使わないとしても、スマホやタブレットは活用するのが普通になっています。
そんな中で、「全くパソコンが使えない」人がいきなりインターネットを活用しろと言われてもうまく活用できないことでしょう。
パソコンが使えいないだけで直接の損失を与えることは稀かもしれませんが、せっかくのチャンスを逃すことは容易に予想できます。
これが、いわゆる「機会損失」と呼ばれるものです。
デジタル機器を上手に使えないことで、会社へ損失を与えてしまう時代が来ようとしています。
最悪クビになることも
どんなに「慣れていないから」と言ったところで、会社ではPCやタブレットを使うのが普通になりつつあります。
そんな中で、間違った使い方をしてしまうことで最悪会社をクビになることもあります。
代表的な例が「フィッシング詐欺」や「ランサムウェア」の被害に遭うと言うパターンです。
「被害を受けたのにクビになるの??」と思う方もいることでしょう。
ですが、フィッシング詐欺やランサムウェアの被害にあう原因のほとんどが、社員自身の操作が原因なのです。
たとえば、メールで送られてきた明らかに怪しいリンクをクリックしたり、返信したりすることでパソコンがウィルスに感染したり、身代金を要求されたりするのです。
いくら「被害者」と言う扱いであっても、その社員の不注意が原因で感染したのであれば、その社員に問題があると判断されることは珍しくありません。
必要なのは「正しい教育」をすること
ネットリテラシーが低いまま社会に出てしまうということは、これらに対する事前知識が一切ないということになります。
ネットリテラシーに関する教育を全くしないまま社会に出るということは、簡単にトラブルに巻き込まれれてしまうことになります。
また、「リテラシー教育を受けたから問題は起きない」と思ったら大間違いです。
正しくリテラシー教育を受けていたとしても、何かしらのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
つまり、リテラシーを身につけていない人であれば高確率で何かしらのネットトラブルに巻き込まれることになります。
そのため、正しい教育をすることが非常に重要となります。
インターネットから遠ざけてはいけない
子どものこの先を考えた際に、インターネットのない生活はもはやあり得ないと言っても過言ではないでしょう。
「臭いものには蓋をする」という考え方も決して悪いことではありませんが、いずれ通る道である以上、今インターネットから遠ざけても問題を先送りにしているだけなのです。
むしろ、子どものうちから正しい使い方を教えることこそが「リテラシー教育」の一環なのです。
インターネットの「使い方」を教える
インターネットを利用する際には、「どのように使ったらいいのか」ということをしっかりと教えることが大事です。
リテラシー教育の一番大事なことは、「どのように使えば問題にならないのか」をしっかりと身に着けさせることです。
リテラシー教育自体はあまり難しいことではありません。
一番大事なのは「ネットの向こうにも人がいること」を意識することです。
Googleなどで検索する場合など、情報を収集する目的でのみ使用するのであれば、ネットリテラシーの問題が発生することはないと言えます。
ネットリテラシーが重要になるのは、自分が情報を「発信する側」になったときです。
この「発信」は、TikTokやTwitterへの投稿だけでなく、友達へのDM(ダイレクトメッセージ)も含まれることに注意しましょう。
社会人になった際に「マナー教育」を受けた方も多いことでしょう。
世の中のマナーの多くは、「相手に不快感を与えないためのもの」です。
そのため、自分が情報を発信する側に回った際に、「それを見た人が不快に思わないのか?」ということを考えるだけで充分なのです。
自分が打ち込んでいるスマートフォンだけでなく、その先にいる「誰か」を意識させることが最も重要です。
いちど「痛い目」を見たほうがいいことも
諸刃の剣になりなねないため強くはおススメできませんが、一度痛い目を見るという方法もあります。
人は一度痛い目を見ることで学習するようになっていますので、トラブルに巻き込まれることでそれ以降は慎重になることがほとんどです。
とはいえ、見ず知らずの人とトラブルになるのは避けましょう。まずは家族など身近な人とのコミュニケーションの中で本人に反省させるような言動を実施させると良いかもしれません。
さいごに
ネットリテラシーとは、簡単に言うと「インターネットを使いこなす能力」と言えます。
DXが進むなかで、これからの人生はさらにインターネットが重要になってきます。
そのため、インターネットリテラシーを身に着けることは社会を生き抜くうえで最も重要なスキルのひとつになっていくことでしょう。
とはいえ、どんなに技術が進歩したところで人間の本質は変わりません。
情報端末がフィーチャーフォンからスマートフォンに変わり、主な情報源が文字から画像、動画と変わってきましたが、その先にいるのはどこかのだれか、すなわち「人間」なのです。
目に見えない、はるか先にある「人間」のことを考えることができるように教育することは、どんな時代になっても生き抜く力につながることでしょう。